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~新しい相続時精算課税制度〜 

相続時精算課税制度は平成15年に創設された制度ですが、今まであまり馴染みのなかった制度です。令和6年1月1日より、相続時精算課税制度にも毎年の基礎控除が創設され、使い勝手が良くなります。今回は、相続時精算課税制度の基本的な内容をご紹介させていただきます。

1.新しい相続時精算課税制度の概要

相続時精算課税制度とは、「贈与する時は2,500万円までは非課税だが、贈与者が亡くなった時には、贈与した財産も相続財産に足し戻して相続税を計算する」という制度です。

■制度概要

基礎控除110万円の創設(令和6年1月1日以降)
・基礎控除後は、特別控除2,500万円に達するまで非課税
・2,500万円を超える部分は、一律20%の税率で贈与税がかかる
・相続発生時は、基礎控除110万円を除いた贈与財産を相続財産に足し戻して相続税を計算する
・相続開始前7年以内の贈与でも基礎控除分は足し戻し不要
・贈与税が発生していた場合は、相続税から控除(または還付)が可能

■適用要件

贈与者は60歳以上の祖父母や父母、受贈者は18歳以上の子や孫(養子も含む)に限られる
※子や孫の年齢は贈与した年の1月1日で判定
・最初に贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、税務署へ「相続時精算課選択届出書」の提出が必要

 

2.新しい相続時精算課税制度の計算例

Aさんが、自分名義のマンションを「相続時精算課税制度」を使って娘に贈与したケースを想定して、税金の計算をしてみましょう。

Aさん 家族構成:妻、娘、息子
財産総額:4,800万円
⇒そのうちマンションの相続税評価額:2,710万円

■贈与時

2,710万円-基礎控除110万円=2,600万円・・・①
2,600万円―特別控除2,500万円=100万円
贈与税:100万円×20%=20万円
※贈与後のAさんの財産総額は、
4,800万円-2,710万円=2,090万円・・・②となる。

■相続時

Aさんの財産総額は、
②2,090万円+①2,600万円
=4,690万円<4,800万円(相続税の基礎控除)

【ポイント】
贈与した2,600万円(110万円控除後)を相続財産に足し戻して相続税を計算しますが、相続税の基礎控除4,800万円を下回るので、相続税は発生しません。さらに、贈与時に支払った贈与税20万円は還付を受けることができます。

【注意点】
※贈与税の還付を受けるには、相続税の申告が必要です。
※贈与で不動産を取得する場合の登録免許税は、相続で取得する場合よりも高くなり、相続時にはかからない不動産取得税もかかるため、検討が必要です。

 

3.メリット・デメリット

■メリット

(1)基礎控除と特別控除が利用でき、贈与税は一律20%
贈与時に、毎年の基礎控除110万円と生涯の特別控除2,500万円が利用できるため、一度に多くの財産を贈与できます。また、暦年贈与は「累進課税」ですが、相続時精算課税制度の場合は、「2,500万円を超えた部分に対して一律20%の贈与税」しか課税されない点も特徴です。

(2)値上がりしそうな財産を贈与すると相続税の節税になる
相続発生時は、贈与した財産を「贈与した当時の価格」で相続財産に加算します。値上がりが予想されるような財産であれば、相続税の節税になります。

■デメリット

(1)暦年贈与に戻ることができない
相続時精算課税を選択すると、その贈与者からの贈与については、暦年課税に戻ることはできません。

(2)相続時精算課税で贈与を受ける孫は、相続税2割加算の対象
例えば、孫が相続時精算課税を選択して祖父から贈与を受けた場合は、祖父の財産を相続しなくとも、相続時精算課税の適用を受けた財産について相続税が発生します。さらにこの場合、孫(代襲相続人である孫を除く)の納付すべき相続税は2割加算されます。

【執筆協力先】
T&A税理士法人 立川事務所
〒190-0012 
東京都立川市曙町1-25-12 オリンピック立川ビル5F
電話 042-540-9958
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